シンシナティ・キッド から 私への メッセージ

私がマックィーンを好きになったきっかけが、マックィーンの死の直後
追悼放送で観た『 シンシナティ・キッド 』のラスト・シーンのジャックのカードの
描写が、ずっと脳裏から離れず、小学校から中学校に入ってからも、
そのシーンの事が段々と大きく気になって、自分でも上手く説明出来ないのだが、
その何か、自分の中でウズウズとさせる理由を求めて、古本屋にある映画雑誌を買い、
マックィーンの写真と触れ合うことになったのです。
それが始まりだった
映画の内容を把握して感動して好きになったとかではなかったし
テレビ放送を観ていて、マックィーンってかっこいいなぁっていうところから
好きになったという始まりでもなかったんです。
ただ あのジャックのカードの描写とバックの音楽が、どうにもこうにも
頭の中から離れずに、その理由を求めて、古本屋に通うことになったのです
実際には、その追悼放送から、古本屋でマックィーンの写真を買って好きになるまで
2年近く時間がかかっていました。
マックィーンの男らしさなら、別の作品を選ぶが、寡黙でクールな姿のマックィーンなら
今でも『 シンシナティ・キッド 』のマックィーンが1番好きかも知れない。


(※因みにチューズデイ・ウェルドが演じたクリスチャン役は、最初 マックィーンがシャーロン・テートをリクエストしスクリーン・テストまで行っています。 しかしペキンーパー監督がクビとなり、ノーマン・ジェイソン監督がウェルトを選んだのです)
冒頭の街外れの博打場から逃げて、列車の方向転換をさせる回転機に飛び乗って
絶妙のバランスをとって走り去っていくシーンは
俺の中ではマックィーンの一番のアクションだ
あの僅かな幅を、手前では内側、中心を過ぎれば
進行方向の外側に重心が振られる回転なのに
あのスピードで、軽々と駆け抜けていくなんてのは、普通では出来ない。
バイクや車でのアクションでない、マックィーン史上 最高でナチュラルなアクションだ
あれこそが、 動物的な身のこなし・・・・ シビレます
ド派手なアクションやCG全盛時代で映画を観ている人間にはわからないマックィーンの凄さ
だから、この映画のフランス版のポスターをオーダーで作った額にいれて
ずっと部屋に飾っているくらいです

年に1回くらいのペースで、歴代のポーカーゲームの映画ベスト5みたいなものが選ばれるのだが、
前に 『 シンシナティ・キッド 』を抑えて、1位になったのは
マット・デイモンも 『 ラウンダーズ 』だったのを知って、
何が『ラウンダーズ』だよって その時は思っていたのです。
でも 実際は、一度もその映画を観ていなかっただけで俺の大好きな
『 シンシナティ・キッド 』に 若造のマット・デイモンが勝てるはずはないという
反発心からきていたのが、最大の理由なんだけどね・・・・
だってジェイソン・ボーンで大スターになる前の1998年の作品だったし
でも1ヵ月ほど前にヤマダ電気のBlu-ray 売り場へ行ったら、
その『ラウンダーズ』が売っていて何故か気になり、ポイントで買ってみた。
しかし ずっと ほっぽらかしにして観ていなかったんです。
それを、今日は外が寒くて、こたつに入って、
じゃあ 観てみるかって、ようやく封を開けて観てみたのです

前半から、なかなか いい感じだなって雰囲気が伝わってきた。
最初のゲームでジョン・マルコビッチに全財産を賭けて負けてしまい
その後 夜勤のトラックドライバーの仕事をして、ギャンブルから身を引く生活をずっと送っているあたりから
おやおや もしやと何か俺とダブりだしてきた。
その後 彼女も無言で家から出て行き、 またかよって観続けていた。

ドライバーの仕事をして昼間をロー・スクールへ通うマット・デイモンは
ロー・スクールの教授のマーティン・ランドーが、マット・デイモンが
ポーカーで相手のカードの読む力を一度だけ見て
その能力の秘密を聞きたく ある晩 マット・デイモンに質問する
そして その後 自身の話をしだすのです
俺は、この話がとても深く そして素晴らしいと思った。
いや 滅多にない脚本だ
彼の家系は、先祖代々ユダヤのラビ(聖職者)だと話し出す
自身も子供の頃から神童と呼ばれるほどの天才で
神学を学んでラビになる為の勉強をしていた
12歳で、その神学書の理解度の知識は40歳並
しかし 【 13 】 歳 の時に
自分はラビにはなれないと 悟ったのです・・・
それは 教典を理解すればするほど神はいないと思ってしまったからです
しかし 皆の為に 神はいると思い込もうとした
だが結局 ラビになるのを止め彼の家族は激怒し ランドーは 遠い親戚に預けられた
そこでようやく 自分の居場所を見つけ法律学と出会い、没頭して勉強し教授になった
それを心の底から天職と感じたと話した
結局 両親はラビにならなかった自分のことを許してはくれず
一生 理解をしてくれないままで終わりました
マット・デイモンが、もし もう一度 人生をやり直せたら
同じ道を選ばれますか?
と質問をする
ランドーは こう答える
他にはない 神学校で最後に学んだことは ひとつ
自分は 常に 自分でしかない
宿命からは逃れられない と

このシーンを観て、 たまらなく ゾクゾクした。
ハリウッド映画を含み世界を動かしているユダヤ人
そのもっとも尊敬されるラビに、子供の頃から神童と呼ばれ
なろうとしていたランドーは、結局 神の存在を否定し
自分の好きな道を選んだのですからね
トーラーやタルムードを学んだものが、神の存在を映画の中で全否定をしているのですから
こんな映画を観たのは初めてだった。
一般大衆の娯楽である映画を観に行ったら、その多くの人たちが信じる神の存在を否定しようものなら
興行も、作品の評価も、ギャンブル・シーンの醍醐味に関係なく、
大ブーイングで失敗に終わるに決まっているのだから
全く有り得ない展開だ。
ユダヤ人がまず、そう易々と自分の口から、他人に自分自身がユダヤ人であるとか
宗教の話までをしださないし、ラビにならなかった家族の汚点になっている
自分の話なんか、 もっと秘密にしておきたいものだ・・・・・・
それから 場面は変わって ポーカーゲームになるのだが
マット・デイモンは仲間の失敗で、借金が膨らみ、取り返そうとするが、イカサマがバレて
警官にボコボコにされ、おまけに最後は一文なしになり、ロシア マフィアに消される寸前にまでなる
もう 後 数時間で借金返済のタイムリミットが迫って来ている
誰もマット・デイモンにはお金を貸してはくれない・・・・
マットは最後に恥を忍んで、 夜中に教授のランドーの家に行き
1万5000ドルを貸してもらえないかと頼みに行く

ランドーは困った顔をして そんな大金はないと断る
しかし ランドーは 彼が神学校を辞めた時に 自身の母親が
前途を心配し お金をくれたと話し出す
それは善行だからと・・・・
今度は 私が同じ善行を君にしたいと言って
1万ドルを貸してくれたのです
これで 苦しみから 逃れなさいと 言葉をかけて・・・・
ランドーは、その時に 情に負けてそうしたのか
それとも その一瞬 神であったのか・・・・
そのお金を持って、 マットは借金の1万5000ドルを返す為に
再び マルコビッチへ大勝負を挑むのです・・・・・・

この映画の最大の醍醐味は、ポーカーゲームのシーンではない
神の存在の話をするマーティン・ランドーとのやり取りと、
最後にマットへお金を貸して上げるランドーの善行
そうして あげたいと決断させた、見えざる力の凄さだ
所詮 映画でのギャンブル・シーンなんてのは
フィクションだから、最後に逆転勝ちのシナリオなんてのは
どうにでも自由に出来るわけだ
しかし この映画の凄いところは、ユダヤ人の映画産業で
ユダヤ人役の人物がユダヤ教の神様の存在を否定し
最後に、トラブルに巻き込まれて殺される寸前の若者の為に
大切な老後の生活資金のお金を貸して上げるという
前代未聞のギャンブルをしている点である
これは 歴史に残されるべき傑作である。
その傑作映画の教授役を演じた人物とは・・・・・
名門 アクターズ・スクールのオーディションに、
マックィーンと二人で合格し、親友となったマーティン・ランドーなのです
私が マックィーンを愛するきっかけとなった
『 シンシナティ・キッド 』から34年
遂に今日 『 ラウンダーズ 』 を観た
大好きだった女性が事件に遭い、復讐を誓って塀の中まで入った俺
上京後 今までの人生に終止符を打つために改名までしのだが
結婚詐欺に遭い、 30年間のカルマで苦しめられ
自分の存在の死を感じた今年・・・
『 ラウンダーズ 』では全財産を失い 腐れ縁の親友を助けたことが
仇となって殺される寸前だったマット・デイモン
『 ネバダスミス 』では両親を3人の男に殺され、復讐を誓った青年が
犯人を殺す為なら、自ら刑務所に入って復讐をする
それを演じたのは スティーブ・マックィーン

3人の男の1人 ナイフ使いの名人ジェシーを酒場で見つける
その男こそが マーティン・ランドー
ジェシーは なんとその時 ポーカーをしていたのである
実は初めてお伝えしますが、私の好きだった子が事件に遭った時の犠牲者は3人でした
あまりのシンクロで恐しすぎます
直ぐに2回目の鑑賞をして気が付いたのですが
冒頭 マット・デイモンが全財産を持って、博打場へ現れた時に、
友人から そんな危険なことは止めて、外へコーヒーでも飲みに行こうと言われます
お前はスティーブ マックィーンなのかとマット・デイモンは忠告されるのです
しかし、このセリフは日本語字幕でも吹替えでも マックィーンとは出てきませんので、
日本人が普通に鑑賞していれば気がつかないシーンでした。
英語字幕もないのでサラっと流れるように 『 シンシナティ・キッド 』の
マックィーンを例えに引用されているのです
俺でも1回目の鑑賞では全く気がつかなかったセリフです
かなり1回目の鑑賞で自分とシンクロするので、気になって
直ぐに 2回目の鑑賞を始めたから、気が付けたのです

この繋がり
『 ラウンダーズ 』 で マーティン・ランドーとなって現れた教授は
間違いなく スティーブ マックィーン

そして それが 俺へのメッセージだった
今月
俺は プット買いの 大勝負へ挑む
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